ICE

異変


最近は地下シェルター付の物件が流行っている。

ロビンソン一家も、手狭になった現在の家を引き払い、ロンドン郊外の地下シェルター付の家に越そうと考えていた。

「どうですか?いい物件でしょう。うち、一押しです」

ウェバーはこの物件の良さを売り込んだ。

リビングは広々20畳、アイランドキッチン、バスルームが二つ。

その上オール電化。

原子力発電が世界の主流となり、ガスよりも安価に取引された。

そのため、町中でガスは姿を消し、電気が使われた。

「素晴らしいのはわかった。地下シェルターが見てみたいのだが」

ロビンソン氏は言った。

「ああ、そうでした。こちらです」

ウェバーは一家をシェルターに案内した。

シェルターの入り口はリビングの隅にあった。

一見しただけでは、そこに扉があるとは気づかない。

「強盗が来たときにも隠れていただけます」

ウェバーはシェルターを見せれば、この客を落とせる自信があった。

扉を入ると階段が地下に延びている。

ウェバーが入ると自動的に照明が点灯した。

天井と、階段一段一段にライトがついている。

「人感センサーになっております」

オレンジ色の淡いライトのお陰で、転ぶことも無さそうだった。

階段を降りるとすぐにシェルターに行き着いた。

ここです。と言ってウェバーはハッチを開いた。

そこにはシェルターとは思えない部屋があった。

ロビンソン氏の想像するシェルターはただの箱で、中は何もない空間、そんなものだった。

キッチンがある。ベットやトイレ。

コンパクトハウスそんな感じだ。

「どうです。お気に召しましたか?」

ウェバーの説明によればこういうことらしい。

水を生成する機械、酸素を生成する機械、それからガスボンベがシェルターに備え付けられている。

ここで半年は暮らせるということだ。

子供たちは秘密基地のような感覚でシェルターを眺めているのだろう。

ロビンソン夫妻は目で合図をして、ウェバーにここに決めたと告げた。

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