魅惑のヴァンパイア

運命の出会い


 目が覚めると、牢獄にいた。


窓一つない閉ざされた空間。


人が一人やっと寝られるくらいの広さで、目の前には太くて頑丈そうな鉄格子が並んでいた。


床は、砂が混じった赤墨色のコンクリートで、夕立後のような、むっとした湿っぽい匂いがした。



 私は腕を使って起き上がり、不安で目を泳がせた。


どうしてこんな所にいるのか、見当もつかなかった。


心臓の動きが速くなっていく。


この状況が、夢の続きではないことが分かると、途端に恐ろしくなってきた。


少しだけ、頭が痛い。


長時間寝すぎた後のような、ズキンズキンと鐘が鳴るような痛さだ。


私はこめかみを指先で押すようにして抑えた。

< 3 / 431 >

この作品をシェア

pagetop