とろけるチョコをあなたに
 単に関心がないだけなのか、絵理の意図を汲んで素知らぬふりをしているのか。どちらにせよ、余裕綽々(しゃくしゃく)で羨ましい限りだ。

「そ、そうか。確かにチョコレートは栄養価も高く、コンバットレーションにも同梱されているくらいだからな。遭難してもチョコレートのおかげで生き延びたという話も聞くし……。まあその、なんだ。あれは良いものだ。うむ」

「レーションといえばアメリカのは食えたもんじゃなかったなあ。でもチョコだけはうまかった。日本でも普通に市販されているんじゃないかな」

「ああ、あの口内で溶けても体温では溶けない、という売出し文句のマーブルチョコレートか。私も食べた事があるが、糖分補給に丁度良かったな」

 何でそこで軍用野戦食や遭難の話になるのか。
 というか、何で青司はそんなもの食ったことがあるんだ。

 この二人の会話は放っておくとどんどん殺伐とした方面へ転がっていく。

 絵理から聞く限り二人きりの時でも同じような調子らしい。この殺伐とした会話が絵理と青司なりの二人の世界の構築の仕方なのだろう。

 この二人を見ていると、羨ましいと思う気持ちとこんな殺伐とした恋人同士になるのは嫌だと思う気持ちが複雑に絡み合い、嫉妬すら満足にできないのだった。
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