とろけるチョコをあなたに
 紅潮した頬が急速に元に戻るのを感じたが、それはそれで都合が良かった。

 手を繋いでショッピングモールを歩く姿は傍から見れば恋人同士に見えるだろうが、オレと絵理の関係はそんなにロマンチックなものではないのである。

 彼女は御剣財閥の後取り娘でオレは一介の執事。手を繋いでいるのははぐれない為だけだ。

 少なくとも彼女はそう思っている。

 本当は手を繋ぎたいだけの方便なのだが、世間知らずな絵理はそういうものだと納得していた。

 街へと散策に出るのは絵理の数少ない気晴らしだった。

 そのお供を仰せつかる時には、こうしてささやかなデート気分が味わえる。

 誰に迷惑をかけているわけでもないし、この位の役得は許して欲しいものだ。


「そう言われてみれば今はチョコレートのセール期間中なのか?
 どこを見ても特設コーナが儲けられておる」

 さすがの絵理もこれだけ大々的にチョコレートコーナが儲けられている事には気がついたらしい。

 興味を示したようで、絵理の足は自然とチョコ売り場へと向かった。オレもそれに続く。
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