とろけるチョコをあなたに
仁義なきチョコ作り
「んじゃ、早速始めようか。言っとくが、このオレに教わっておきながら無様なものを作ったら承知しないからな」

 オレの宣言に絵理はゴクリと唾を飲み込んだ。一瞬怯んだように見えたがすぐに瞳の輝きを取り戻す。

「元よりそのつもりだ。至らないところがあれば遠慮なく指摘して欲しい」

 なぜか絵理は『必勝』と書かれた鉢巻を取り出し、自分の額に巻いた。おそらく気合を入れるためだろう。

「さあ、どこからでもかかってくるがいい!」

 絵理は片手鍋とゴムベラをまるで二刀流の剣のように構えて気合と共に言い放った。

 かなり間違った光景だが、今この場にはこれに突っ込む者は誰もいない。

「いい覚悟だ。じゃあ、まずコーンスターチを取ってこい」

「へっ!?」

 オレの口から出た言葉が予想外だったのか、絵理は虚を突かれて固まった。
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