とろけるチョコをあなたに
届かぬ想い
 放課後になり、絵理を1‐Aの教室へと迎えに行った。まだ残っている生徒は既にまばらで教室は閑散としていた。

 絵理は楽しそうに隣の席の男と話をしている。

 細身で美女と見紛うほど顔立ちが整っているから、男だと判別できたのは制服のおかげだった。もっとも、今ではよく知った仲なので間違えることはないのだが。

「絵理さん、迎えが来たみたいだけど」

「む。そうか。青司、いつもつき合わせてしまって申し訳ない」

「いや、俺が好きで一緒に待ってるんだし。バイトまで暇だったからね」

 こちらから声をかける前に、絵理と青司のそんな会話が聞こえてきた。

 ……相変わらず仲が宜しい事で。

 絵理と青司は恋人同士だから仲がいいのは当り前といえば当り前なのだが、その様子を目の当たりにするのはいつになっても慣れないものだった。

 絵理はわざわざ教室まで迎えに来させるという過保護な扱いは元々望んでいなかった。

 だが春にトラブルに巻き込まれて以来、生徒会のない日は絶対に教室で待っているようにオレが約束させたのだ。
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