視線の権利

疾走!

昨晩は。

流石、商社マンと腕利き派遣女子の巣である広いマンションの一室。

高そうなオリーブオイルを使った極上ポークソテー、これまたゆったりバスタブに香りの良いアロマオイルの入浴剤。

広ーいダブルベッド


は、アキノの寝相の都合によりこっそりクロゼットから毛布と羽毛らしき布団を拝借。

寒い時期なのにフカフカであったかくて

極楽……。快眠~。

ひさびさの、熟睡。

ジリリリリリ!!!

「ひゃっ!」


あ、目覚まし?


あ、さ、5時ですとお~!


間違いだろうと布団にくるまる私を、

踏みつける足!

「ケイナ! 遅刻するわよ!」

痛くて声も出ない私。
あ、すっぴんのアキノって可愛い。
今のポーズと組み合わせるとちょっと中性的でりりしい感じ。
女子校だったら、甘辛いバランスの良さで女の子にモテそうなタイプ。

しかし肌キレイ……。

なんて思ってるうちに私はずるずるとシャワー付き洗面所に引っ張られていた。

「とっとと顔洗いなさいよ」

「まだ早いって~。それに私、肌が弱くて洗顔料とか化粧水合わないかも。今日石けんで、すっぴんでいいよ~」

「何言ってんの! 早くない! アタシも肌弱いほうだから使って! メイクも2人分なんだから急いでよね!」

あ、自分のファンデーションとかないや。

え? メイク2人分?
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