もし、もうすぐ死ぬとしたら、何がしたい?


学生の頃、戯れに友達と交わした質問に、私は何と返しただろうか?


確か、世界一周旅行とか、とてつもなく大規模で、夢物語のようなことを答えたに違いない。


最期くらい、派手にパァーッといくのだと。



だけど、実際にそうなってみると。


何気ない日常が輝きだして、ずっと変わらぬ毎日を過ごしたいと思った。


そのかけがえのなさに、私はもっと早く気付くべきだった。





「ふぅ〜……。」


書きかけの手紙を、丸めてゴミ箱へと投げ捨てる。


愛しいアノ人への、最後の手紙。


もうペンをとって3日になるけれど、なかなか上手い言葉が見つからない。



それに、まだ私は自分にいきなり降り掛かってきた不幸を信じられていない。


思っていたより生に執着する自分に、苦笑を禁じえない。


…もっと、あっさりした性格だと思っていたのにな。


流石に生きることに関しては別なのか、それとも、心残りがあるからなのか。


どちらもきっと正解で、でも、一番の理由は、……怖いのだ、『死ぬ』ということが。


人は、死ぬ前に、穏やかな気持ちを手に入れられると聞くが、今の私にはとても信じられそうにない。


今の私には、黒い大きな穴がポッカリと、私を飲み込もうとしているように感じられて、毎日が恐怖と闘う日々だ。


とても、悟りの境地などひらけそうにない。