魔念村殺人事件
第一話 舞い込んだ依頼
 殺風景な室内には、電話の音が鳴り響いた。


「はい、探偵社RIKUです」


 そう云って電話に出たのは、石川陸、二十七歳である。もうすぐ二十八歳になろうとしていた、八月の上旬のことだった。

 陸は、一年と少し前まで出身地であるA県の居酒屋のアルバイト店員だったが、ある事件に巻き込まれ、そこで犯人逮捕に一役買ったこともあり、それをきっかけに探偵になったのである。それまで貯めていたお金で東京に出ると、三階建ての古いビルの二階にある一室を借り、「探偵社RIKU」を始めた。一階は本屋さんで、三階は設計事務所である。「探偵社RIKU」の室内は、貰い物のテーブルとソファ、そして灰色のよくありがちな机と椅子、机の上にはなかなか新しいパソコンが置かれている。しかしこれも、依頼人の金持ちからの貰い物である。他には小さな棚と冷蔵庫、棚の上には電話、それぐらいしか設置しておらず非常に殺風景である。

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