魔念村殺人事件
第八話 車の中で(その一)
 陸は深呼吸すると、春樹にまずガジュマルの木について訊いた。


「公民館の裏にあるガジュマルの木が村で一番大きい木だっていうことは、どの程度の人間が知っているんだ?」


「それなら魔念村に住んでた人間なら皆知ってる。ただ、他の地域の人なんかは知らないだろうな。公民館の後ろだから目立たないだろうし、それに魔念村に外部から観光客が来ることすらなかったんだから。峠を三つも越える場所にあることや、魔念村のケムンドウという魔物の話しを聞けば、おのずと行きたがる人間なんていないよ」


 確かにそうだろう。俺だって春樹の頼みがなければ、進んでこんな辺鄙な場所を訪れようとは思わない。それにケムンドウという魔物の話しを聞いていたなら尚更だ。


「真優ちゃんに恨みを持つ人間の心当たり、本当にないか? どんな些細なことでもいい。気付いたことはないか?」


 春樹は目を伏せ眉間に皺を寄せた。考えているのだろう。
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