フェイクハント
第一章 一・新たな事件
「おいおい、またチェスターが現れたってのか。この被害者は早瀬、お前と同じ歳だな。免許書に書いてある。桂田静夫、まだ二十六歳という若さだ、かわいそうに……」


 白髪の混じった四十代後半のベテラン刑事である篠田が苦渋に満ちた顔で、被害者に着けられた仮面を外しながら早瀬という若い刑事につぶやいた。


「この被害者……私の親友です……。幼い頃からよく知っています」


「何だって! そうだったのか……辛いだろうが親友のためにも犯人を捕まえるんだ。な、早瀬」


 早瀬海人は俯いたまま、静かに頷いた。

 四人目の被害者である桂田静夫は、河川敷で遺体となって発見された。

 第一発見者は、近くに青いテントを張る、ホームレスの老人だ。

 夜中に犬の鳴き声で目が覚め、テントを出ると、大きな桜の木に向かって、犬が吠えていたので、近づくと桜の木の前で、仮面を着けた死体が横たわっていたのだ。

 ホームレスの老人はすぐに警察を呼び、何台ものパトカーが駆けつけたのである。

 既に三件の連続殺人事件が発生していたこともあり、捜査に当たっていた刑事が、新たに仮面を着けた死体があるという連絡を受け、鑑識を引き連れて急いで来たのだった。

 桂田静夫は、後ろから紐状の物で絞殺されており、うつ伏せの状態で倒れていたのだが、犯人がわざわざ仮面を着けるためなのか、顔だけを故意的に横向きにしたようだった。

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