フェイクハント
二・行方不明
 典子の家に着き、駐車場に車を停めると、すでに鑑識や警察が去った後だった。

 玄関にはやはり雪絵の履物もなく、祭壇の部屋を覗いても、雪絵の姿はなかった。


「あら、雪絵帰ったのかしら? 用事でもあったとか聞いてない?」


 典子に訊かれた涼と秀樹は言葉に詰まった。

 何故なら、静夫の浮気相手が、本当は雪絵だということを知らない典子に、話すのを躊躇したからだ。


「あいつ、会社に行ったのかもしれないから、俺も会社に行ってみるよ。また連絡する。二人で大丈夫か? 戸締りきちんとしろよ!」


 秀樹が上手く話しを変え、踵を返し、玄関を出て行った。


「とにかく典子疲れたでしょ、座って。私お茶淹れてくるわね」


「ありがとう」


 涼は典子に微笑しながらそう云うと、一階の奥にあるキッチンへ向かった。

 それにしても、雪絵はあの後どこへ行ったんだろう? 確かに秀樹とも典子とも顔を合わせ辛いだろうな、と涼は考えていた。
< 44 / 79 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop