ドライヴ~飴色の写真~
飴色の写真
 夕日は暑すぎるくらいで、この部屋の淀んで湿った空気を沸かしている。

 まさに初夏であることを、改めて思い知らされるような不快さ。


 だが、その男が果たしてそう思ったかどうかはわからなかった。

 男は、遠くを見つめるような目で、目の前のそれを見つめている。


 その視線の先には、写真があった。


 数分して次に男は、今まで見つめていた写真の隣の写真へと視線をじわりと流す。

 また数分してから、今度はその上の写真を見つめる為に、顔を動かす。

 その行為を、男は何時間も続けるのだろう。


 部屋の壁一面は、数十枚もの写真で埋め尽くされていた。
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