ドライヴ~飴色の写真~
「言っとくけどな。誰にでも優しいわけじゃない」

 篠さんが、静かに口を開いた。


 私は、一瞬眉をひそめ、篠さんの顔を見つめ直した。

 質問を変えてみる。


「じゃあ、なんで最近、篠さんは私に優しいんですか」


「それは……企業秘密だ」

「企業って何」



 それ以上の答えが、篠さんから返ってきそうもなかったので、私はなんとなく不完全燃焼な気分のまま、必要な荷物をまとめ始めた。

 明日から、また、暑くなるらしい。

 私は、夏服を多めにバッグに入れた。
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