ドライヴ~飴色の写真~
レンズを追え
   〈1〉

 ここは篠敬太郎探偵事務所と同じビルの1階、喫茶店《シャギー》の店内だ。

 今は11時を回ったところ。
 喫茶店はオープンしたばかりのせいか、お客はまだ一人もいない。

 店の奥から、篠さんと私を見つけて、顎に髭を生やした凛々しい顔の30代半ばくらいの男性店員がかけよってくる。

 彼が、ここのマスター《来田雪冶(くるたゆきじ)》だ。


「敬ちゃあん! あら、なぎちゃんも」


 私の全身から力が抜けて、バランスが崩れる。こけっ。

 彼は所謂《オネエ》なのだが、私はこの初めて出会った人種にまだ慣れないでいた。

「ユキちゃん。今日はちょっとお願いがあって来たんだ」

 篠さんはすっかり慣れているようで、この雪冶のことを平気で《ユキちゃん》と呼ぶ。
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