月と太陽の事件簿12/新幹線殺人事件 静岡‐掛川間49・1キロの謎
「ひとりめの被害者は、田村清20歳。N大学の学生だ」

岸警部は都内の私立大学の名前を口にした。

掛川へと向かう新幹線の中。

あたしは岸警部から事件の概要を訊いていた。

田村の遺体が発見されたのは、新幹線のトイレの中。

掛川駅に到着する直前だった。

「ドアが半開きになっていたのを不審に思った車掌が中を覗いたところ、腹から血を流した田村が、トイレの中で倒れていたそうだ」

死因は出血多量。腹をひと突きされており、そのそばには凶器と思われる血まみれのナイフが転がっていた。

田村が乗っていたのは、こだま417号。

車掌やその他の乗務員の証言によると、掛川の手前である静岡駅に停車するまでは、車内に異常はなかったそうだ。

「静岡駅に到着する直前、車掌は田村が死んでいたトイレの前を通っているが、ドアは閉まっていて、中で争っている様子は無かった」

「では、田村は静岡駅を出てから襲われたんでしょうか?」

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