元気あげます!巴里編
好きですから。

水口ひかるは20才になる年にパリへ留学とパティシエ修行にやってきました。

とはいっても、ひかるは凄腕の職人志望ではなく、お菓子とパンを出すカフェを経営するための実業家志望でとにかく一通りを勉強するためにパリまで来たのでした。


朝から毎日修行させてもらっているお店は、ひかるの名前と同じ光という意味の「ルミエール」という名前の洋菓子工房です。

オーナー兼チーフシェフはパティシエのコンクールや有名高級ホテルのシェフとしても名をはせた人物で、現在は世界中から修行しにやってくる若者から選ばれた人だけが通える専門実習校となっていました。


今年、修行させてもらえる弟子はひかるを入れて5人。
指導者側はチーフのヴァレリーと兄弟子のティエリとセルジュの3人でした。


5人の弟子のうち、ひかる以外はというと、フランス人はひとりだけで、あとは3人がアメリカ人でした。
しかも、女性の弟子はひかるだけ。


はじめての挨拶時はすべての人から冷ややかな目で見られてしまい、ひかるは恐怖をおぼえてしまいました。


ところが2日目になった途端、指導側の3人はうって変わってひかるに親切に接するようになり、ひかる以外の弟子たちは不満顔になりました。



他の弟子の中でひかるより年下のルーイがひかるにたずねました。


「ひかるは何か強いコネがあってここに入れたの?」


「わからない。もしかしたらそうかもしれないの。」


「もしかしたら・・・ってどういうこと?」




ひかるは自分の後ろ盾である琴美と千裕のことをルーイに話しました。
コネをどう使ったかなんて説明はしてくれないので、はっきりとはわからないことも話しました。

するとルーイは琴美の名前だけで、声をあげました。


「マダム=コトミのとこに住んでるの?」

「ええ。パリで勉強するようにすすめてくださったのも琴美さんで」



「すごいよ。コトミがそんなに大切にしてる女の子だっていうだけで、ほとんどの店で顔パスしちゃうよ。」


「えっ、そんなに琴美さんってすごい人なの?」


< 1 / 126 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop