陽のあたる場所で 〜戦国遊戯3〜
本当に少しの間しかいなかった片倉家。
布団の中から見慣れた天井を見つめながら小さく呟く。

「…今日でお別れ、か」

決して長い間滞在していたわけではないが、それなりにおはるたちとも仲良くなってきたところだったし、ようやく屋敷の中の構造も覚えてきたころだった。

不意に寂しさがこみ上げてくる。

到底現実とは思えないような出来事ばかり続いていたこの状況で、ようやく見つけた、少しだけど、安心できる場所。
その場所も、明日には出て行かなくてはならない。

「ねぇ…こた。いる?」

横になったまま、姿の見えない人間に声をかける。

『なんだ』

姿は見えないまま。
だけど、どこからともなく声だけが小さく聞こえてきた。

「側仕えって…何するの?」

『………主による』

小太郎の答えに、幸姫はむくりと起き上がった。

「ね、こた。どこにいるの?姿を見せてよ」

幸姫が言うと同時に、隣に人影ができた。

「こたは、どんな仕事してきたの?」

「俺は忍だ。敵の内情を探ったり、撹乱したりすることが多かったな」

「へぇ…」

「それより、明日は早いんだろう?もう寝ろ」

小太郎に布団に寝かしつけられる。
幸姫が布団に入ると同時に、小太郎の姿が消えた。

「…おやすみなさい、こた」

そう、小さく呟くと、おやすみ、と、小さく声が聞こえた。


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