花の魔女
一方、ラディアンはすねたような表情でジェイクと剣を打ち交わしていた。
キンという金属の音が、時折辺りに響き渡る。
「剣術なら、もう父から教わったんだけど」
ラディアンがジェイクに文句を言うと、ジェイクはふんと鼻をならした。
「お前、この森に来てから一度も剣を握ったことがないだろ。もう体が鈍ってるぜ、ほら!」
ジェイクはさっとラディアンの隙をつき、剣を弾き飛ばした。
ラディアンはうっと声を漏らして、今の衝撃で少し痛んだ右手をさすりつつ、弾き飛ばされた剣を拾いに行った。
ジェイクはその様子を腰に片手をやって眺めていたが、そっと口を開いた。
「……何かあったんじゃないのか」
ジェイクのいつもより低い声にラディアンは剣を拾う手をぴたりと止めた。
ジェイクは真剣な目をこちらに向けており、ジェイクの本当の狙いはこの話をするためだったのかと気づき、ため息をついて剣を拾い上げた。
「ジェイクは鋭いな。感づかれないように気をつけていたつもりだったんだけど」
ジェイクは腕をくんでふふんと笑った。
「甘いな。女どもは気づかなくても、俺は気づくさ。で、何なんだ」
ラディアンはジェイクに引き下がる気がないのを認めると、諦めて剣を腰の鞘に戻した。