花の魔女
パリーン!!!
「!!?」
突然、静寂を破って家中の窓が一斉に割れてガラスの破片が飛び散った。
続いて大きな音をたててドアがはじき飛ぶ。
「きゃああ!?」
恐怖にラディアンに飛びつき、不安気に彼の顔を見上げると今までになく厳しい顔つきでドアの方を睨んでいた。
ラディアンがぎゅっとナーベルを自分の方へ痛いくらいに引き寄せたので、ナーベルは痛みに顔を歪めたが、ラディアンに倣ってドアの方を見た。
息苦しいほどに心臓がドクドクと鳴っている。
しばらくドアをじっと見ていると、コツコツとゆっくりとした足音がし、黒服を着た数人の男達が入り込んできた。
皆、仮面をつけており、どのような人物なのかも判断がつかなかったが、ナーベルはただ怖い、と感じラディアンに巻きつけた腕に力をこめた。
『ラディアン・ベルネットはお前か?』
仮面男の一人がラディアンを見据えてくぐもった声で尋ねてきた。
ナーベルはその声が嫌だと感じた。
寒気がするような響きがするのだ。
ラディアンはナーベルをもう一度引き寄せてから、ああ、と静かに答えた。
ナーベルはその瞬間、男がククッと仮面の下で笑った気がした。