飴色蝶 *Ⅱ*

彼女の幸せ

『私を貴方の
 家族にしてください』

この生きる世界で、家族と
呼べる者達を亡くしてしまった
庵にとって、菫の言葉は、心が
震える程に嬉しいものとなる。

でも・・・本当に、このまま

突き進んでいいものか?

彼女が笑顔を無くし、澄んだ瞳
が悲しみ色に染まってしまう日
が、今後、訪れるかもしれない
・・・

庵の心の中で、不安な想いは
どんどん大きくなっていく。

加速する車の後部座席に座る
庵は、照れながら要に話した。

「近々、すみれと所帯を持つ事
 になりそうだ」

「親父、本当ですか?
 それは
 スミレさんも喜ばれたはず
 私も、とても嬉しいです
 おめでとうございます
 お二人には
 幸せになって頂きたい」

幸せ・・・

要の言葉が庵の胸に引っかかる。

「こんな俺が、すみれを
 幸せにして
 やられるだろうか?」
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