偽りの結婚




「シェイリーンの幸せのためだって分かってても、辛い役回りだった。演技だと言うのに本気になってしまったしね。けれど、これで諦めもついたかな」


振られたというのに、何故かすっきりした顔をしている。

これも、演技とは言え、思い焦がれた人に告白出来たからだろうと思う。

やはり、想いを告げる事は良い意味で区切りが付けられる。

シェイリーンに伝えたことに、嘘偽りはなかった。




「すっきりされたようで、良かったですわ」


アリアもほっと一安心した表情を見せる。

自分が計画の首謀者だっただけに、一番気にしていたのはアリアだった。




「それで?シェイリーンの反応はどうでした?」


けんもほろろに話題を変えるアリアに呆れる。




「まぁ、あの様子だったら大丈夫だと思うよ」


私は戸惑いつつも、変化が見られたような気がした。

少なくとも、このままではずっとラルフ様の事を忘れられずに苦しむということは分かったはずだ。





「そうですか。一週間後が楽しみですわね」


人の気も知らないで…

ワクワクとしているアリアを余所目に、ベルナルドは顔をしかめる。



「知らないよ。僕の役目はこれで終わりだ。もうあの二人の恋路に関わるなんて御免だね」

「ちょっと、お兄様ぁー。ごめんなさいってば!」


機嫌を悪くした兄に、アリアは焦る。




使用人たちの話では、その夜、ノルマン邸の廊下で兄弟喧嘩が繰り広げられていたとか…




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