偽りの結婚



ふふっと二人で微笑み合っていると――――


「失礼します。シェイリーン様、お迎えにあがりました」


モニカが一礼して微笑む。

その時が来て途端に心臓が早鐘を打つ。




「ほらっ、シェイリーン!」


椅子から立ち上がらない私をアリアが促す。




「え、えぇ…」


アリアに促され立ち上がったが、足元が震える。




「それじゃぁ私は先に行って会場で待っているわね」


また後で…と嬉しそうに微笑み、アリアは先に部屋を出ていく。





「ではご案内いたします」


アリアが出て行った後、モニカが私の長いドレスの裾を持ちながら移動する。

そして中庭に繋がる扉の前まで来て歩みを止めた。





「モニカ…緊張するわ」


今更だったが、言わずにはいれなかった。



「大丈夫です。この扉をくぐったら、他の者など見ずにラルフ様のところへ真っ直ぐと進めば良いのです」


緊張で震える私の手を取って、モニカは優しくゆっくりと言う。



「わ、分かったわ」


私は一言そう言って扉の前に立つ。







「では、いってらっしゃいませ」




モニカの嬉しそうな微笑みに見送られ、扉が開く―――


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