大好きな君にエールを

side*麻帆





今日で最後、か。


何度も自分に言い聞かせて、最後の学校に足を踏み入れたあたし、倉橋麻帆(クラハシアサホ)は、今日で中学校を卒業します。


この景色も風もこの花も、そして


────……あいつのことも。


この場で見られるのは、今日で最後になる。


これからは別々になっちゃう。そう思うとあたしの目に映る景色が滲んできた。


おぉっと、危ない危ない。まだ卒業式も始まってないのに、泣いちゃうなんて。慌てて涙を拭った。



「あーさほぉー!」


3年間お世話になった校舎を見ていると、親友の沙月(サツキ)が目を腫らしながら駆け寄ってきた。


ボブの似合う可愛らしい沙月は、中学ではかなりモテていた。


「麻帆とっ……麻帆と離れたくないよぉ……」


そして何より涙もろい子。この涙に担任の先生は何度頭を抱えただろうか。


「さ、沙月、そ…そんなこと言わないでよぉ」


そしてあたしも涙もろい。きっと3年間一緒にいた楓のが、移っちゃったんだ。



< 2 / 526 >

この作品をシェア

pagetop