修学旅行★幼なじみと甘いキス

「俺、先ホテル戻るわ」

「!……えっ?」

「も、戻るって…?」


思わぬその発言に、戸惑いを隠せない男子たちや女の子たち。


ところが翔は
そんな皆からの質問には一切、何も答えようとはせず

ただ無言で手にしていた財布からいくつかの小銭を取り出し
テーブルの上へばらまいたかと思うと

こっちも見ずにフイと背を向け、さっさとこの店をあとにして行ってしまった。


そのまま姿が見えなくなってしまった翔に、

今まで茫然と座り込んでいた健くんが、とっさにハッ!と気がついたようにイスから勢いよく立ち上がる。


「――あっ…、お、おいっ翔…!待てよ!」

「待って翔くん…!」


そんな翔を追いかけるように、この場をダッ!と駆け出した健くんへ続いて

なんとあの三浦さんも、カタン!と急いで席から立ち上がったかと思うと

翔たちのあとを追い、バタバタと店を出て行ってしまった。


「……な、なんだなんだ?どうしたんだよ一体…」

「なにが起こったんだ?;」

「つか大丈夫なのか?翔のやつ…」



ザワザワ


三浦さんたちがいなくなったあと、この場はすぐに騒然となり

残された皆は何が起こったのか分からない様子。


そのまま辺りは混乱とざわめき返る中


ここに残ったわたしは一人、放心状態のまま……
何も考えられずに、ただその場で立ちすくんでいたんだ。



「…――」


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