桜の記憶

 あれからもう何十年たったんだろう。

秀二さんと会わなくなってから2年後、
日本は終戦を迎えた。

戦後のひもじさの中、
私は親の決めた相手と結婚した。

その夫が死んだのが
私が76歳の時。

そこから7年くらいは経ったんだったか。

もう年を数えるのも面倒になっていた。


「ほら、ばあ。ここなら静かだろ?」


ひ孫が連れてきてくれたのは、
公園の喧騒から少し離れた場所で、
ポツンと一本だけ桜の木が離れて咲いている。

その木の根元に、私は腰をかけた。

サングラスの黒い色に覆われて、桜が舞う。

色はしっかりと見えないけれど、
ゆらりとした動きが綺麗だ。

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