雪女の息子
序 妖と人

『妖怪』

自然との境界の曖昧さからの畏怖の感情、
自然とともにある生活の畏敬や感謝など、
人の恐れを元にして生まれるとされる。

それらは人ではなく、自然でもない。
そこにいるがそこにいない。
恐れを与え、幸福を与え、
あがめられて恐れられる。


本当に、そうだろうか?
妖怪は常に恐れられる側なのだろうか。

そう疑問を感じるときもある。
今、日本は自然が減少し、自然への感謝も恐れも昔と比べ少ない。
自然が人に支配されようとしてきている。
妖怪は、自然の中でしか生きる事の出来ないものがいる。

力ないものは、人であれ妖怪であれ、自然であろうと、
自由に生きる事は出来ない。

現に力弱き妖怪は、人を恐れ、隠れている。
ならばその弱い者はどうする?

答えは一つ、頭にある。


「俺が守ってやる……」

弱き妖怪は守る。
そして人から妖怪を守り、平穏に暮らす。
その事を野望に持つ一人の青年がいた。

彼は、人であって人でない。
妖怪であって妖怪でない。
黒でもなく、白でもない。

人でありながら、妖怪。
妖怪でありながら、人。

  ――半妖。

彼の名は、
雪代 冬矢。

人と雪女が交わって生まれた存在である。
昼は人として喫茶店を営み、
夜は妖怪として、動き出す。

この話は、
雪女の息子冬矢と、
その周りの妖怪や人たちの物語である。

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