恋時雨
再会
あの日から、安時は初香のことばかり考えている。

「初香殿は、誠にお綺麗でしたなぁ。隆教殿」

たくさんの中年の男が、そう隆教に話しかけるからだ。

「いいえ、そんな綺麗などと…」

隆教は、そう言いながらも嬉しそうだ。

「あ…安時殿」

隆教が、安時に気がついて走ってきた。

「あ、隆教殿!…この前の妹君の舞、とても美しかったです」

安時は、爽やかな笑顔を作った。

そして、ぺこりと頭を下げて去った。
顔が赤くなっているのを隠すために。

「はぁ…」

安時は、ため息をついて、そのまま邸の外に出て行った。
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