パパはアイドル♪ ~奈桜クンの憂鬱~
第1章 サクラ色の日常

―サクラひらひら…―




「………七海………七海…どこだよ……七海…」


奈桜(なお)は暗闇の中、必死に手を伸ばす。
あと少し…もう少し…


何となく見えるその後ろ姿が振り返りかけた…


「七海………」


あともう少し……





「…起きて!起きてって!」


「う…ん……」


柔らかい布団に包まれた身体はまだほとんど動こうとしない。


寝癖がついて少しハネた茶色い髪。
気持ち良さそうに閉じた瞼。
上唇より厚い下唇。
下唇の方が厚い人は与える愛より与えられる愛が大きい人。


小顔で、細身の体つきは布団の膨らみからも分かる。



(まだ目を開けたく…ナイ)


「鳴ってる!!携帯!!…鳴ってるよ。……パパ!!」


キティちゃんのカワイイ枕に顔を埋めていた目元が、ピクッと動いて反応した。
< 1 / 337 >

この作品をシェア

pagetop