論理的サイエンティスト
論理的サイエンティスト
大学助教授
春の香りがして、緑は輝きを増した。
その上ウグイスの泣き声が響く空が、開放感を促す。
なのに、この部屋はそんなのどうでもいいみたいに、薄暗くてひんやりしている。
「……」
「……」
聞こえるのは、アイツが備品や薬剤を動かす音、それだけ。
あたしの存在は完璧無視。
とある有名大学の一室、科学研究室。
兼、若手大学助教授 雨來渚(ウキナギサ)のプライベート実験室。
カーテンを閉めてどっぷり薄暗くした室内で、なんであたしがいるんだろう。
「ねえ、」
声をかけても、無視。
聞こえてるのかすらわからない。
「ねえ、ちょっと」
ーカチャ、カチャ
ビーカーのこすれる音ばっかりしてて、
それがあたしをコイツの興味からはずすんだ。
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