ほっぺた以上くちびる未満
 
「火、つけるならつけてみィ?」


抱き締められる距離まで近付いて、ようやく驚いたように顔を上げた彼女。


なにほっと溜め息なんてついてるん?


気ィ抜いたらアカンよ。


ボクが今まで素直にキミの言うこと聞いた試しないやんか。


胸元のリボンにかけられたままの小さい手を、くいっと顎で指す。


「早く着替えたったらええやん」


ボクが目の前に立ってたら、キミが着替えられるわけないってことを知ってる上で、意地悪言うてみる。


「じゃあ着替えるからどいて!」


「なんで?

イヤや」


悔しさに滲んだ表情も悪うないね。


なんやろ、おかしいなァ……。


煽られる。


久しぶりに会うたキミは、なんだか妙に大人びていて、なんや不思議な気持ちになってまう。


5つ離れていると言っても、昔っからキミはボクに女を感じさせる。


そして、今日は特に。


 
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