ほっぺた以上くちびる未満
 
大きな目いっぱいに涙を溜めてボクを見上げるその表情は、あんまり綺麗でいじらしくて……。


抱き締めてあげたいと思うと同時に、いっそ滅茶苦茶に泣かせてみたいという欲望も掻き立てる。


いつの間に、この子はこないな表情覚えたんやろ。


 
「……アカンで?

そないな顔したら」


キョトンとした彼女の首もとに、噛みつくようなキスをする。


痛みに顔を歪める彼女、なんや子猫を襲う狼の気分。


「や……だ」


彼女がボクの肩にぎゅうっと爪を立てる。


「聞こえへん」


どんなに子猫が爪を立てても、狼からしてみればそんなもの、ダメージどころか、逆に興奮を駆り立てる加熱剤。


彼女の首筋に浮き上がった赤い痕を見てゾクリ、身体中の血が沸き上がる。


「……堪忍な」


その痕を指でなぞると、彼女はビクリと肩を上下させた。


「男おるんやったな」


お仕置きはもちろん続行中。


「“コレ”、バレたら大変なことになってまうんやない?」


バレる相手なんていないんやろけど。


「バレんように隠しときィ」


最後にそう意地悪を言えば、しょんぼりと眉を下げる彼女。


 
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