雪情
【伝説の開始ー13】


この強い吹雪だが
田崎は懸命に走る。




今のは
誰が撃った銃声か。





そして
正確な方向も分からず、
闇雲に走るうちに

目の前に
人影が見えてくる。





その人影は小川であった





小川は、
銃口を
田崎とは反対方向に
向けて
立っていた。





「どうしたんだ!!
小川さん!!

何があったのかね!!」





田崎の声に気付き
振り向いて、

小川は驚きの顔で答えた





「ヤツだ!!
雪男が出たんだ!!」





「雪男だと!!?
どこにいる!!」





「もう向こうに
去って行っちまった!」





小川が指した
その方向には、
もう何もいなかった。





ふと足元を見ると、
誰かが倒れている。





それは荻原であった。





「荻原さん!!
大丈夫ですか!!?」




と田崎はしゃがみ込み、
荻原を抱き起こす。





その時、
大久保と白井が
駆けつけた。





「どうしたんですか!」





大久保は大声で言ったが
田崎は答えなかった。




さらに大久保は続けて


「何があったのですか!」





それでも田崎は答えない





田崎は、
聞こえていないわけでは
なかったのである。





「刑事さん!!」





そう言うと、
ようやく大久保は
田崎が抱きかかえている
荻原に気付く。





それを見ると、
大久保は
何も言わなくなって
しまった。





白井も
抱きかかえられた荻原を
覗き込んで見る。





すると、
白井の顔がみるみる
青くなった。





抱きかかえられた
荻原のその首は、
地面に向かって
ダランと垂れている。





「もう死んどるよ……」





と田崎は言った
< 76 / 284 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop