【短編】クリス王子とセシル姫
喧嘩中の2人
緑豊かなファラント王国に、いつもの平和な朝が訪れていた。
明るくなった空に鳥が優雅に舞い、歌を奏でながら、優しく朝を知らせてくれる。

そんな中、ファラント王国の中心に存在する王城も生まれたての日の光を受けて輝いていた。

気持ちよく晴れた朝の光が城の居館に存在する部屋を満たし、開いた窓から爽やかな風が舞い込む。

ファラント王国の第一王子クリスは、そんな風に頬を撫でられ、今日も自然に目を覚ました。

クセの無いライトブラウンの髪と同じ色の瞳が開いた目から覗く。

長い睫に縁取られたその大きな目は、18歳という年齢よりも彼を童顔に見せていた。

広い寝台で体を起こしつつ、無意識に隣を見る。
1人で寝ている彼の隣には誰も居ない。

クリスはそれを確認すると、最近毎朝そうしているように顔をしかめた。
ライトブラウンの髪に指を通してクシャクシャっと掻き回す。

そして小さくため息をついた。



彼はここ1ヵ月以上、自分の最愛の妃であるセシル姫と床を別にしているのだった。




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