煌めきの瞬間
放課後



「遅かったね。お財布見つかった?」


「うん」


「早く食べなきゃ昼休み終わっちゃうよ。
あれ? そのパンどうしたの?」



教室に戻ったわたしは、体育館で安藤さんに会い、パンを貰った事を美鈴に話した。


美鈴は空になったお弁当箱の蓋を閉め、焼きそばパンに目を向けた。



「ふふっ。やっぱり楓さんは優しいな‥‥」


「え?」



美鈴の言葉に一瞬目が丸くなった。



初対面のわたしにパンをくれた安藤さんは、たしかに優しい人だと思う。


けど、「うざい」なんて言葉を口にする人を、美鈴は優しいの一言で表現するの?




「安藤さんは優しい人なの?」


「優しいよ。今からだとお弁当を食べる時間がないから、そのパンを春香にくれたんでしょ?」


「う‥‥うん。たぶん」


「でしょ? 楓さんは優しい人だよ」




とても優しい微笑みを見せた美鈴は、わたしには見えない何かを見ているようだった。







< 32 / 116 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop