*写真屋の恋*

ピント





◆◆◆◆◆◆




◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆







ジーンズで手汗を拭きながら、カメラを握り直した。



目の前には、ぐずっている男の子。


両目にいっぱい涙をためて、小さな手で可愛らしいヒラヒラな洋服をギュッと握っている。


そして一度もこちらを見ない。

…うわー。コレどーしよー。


とりあえず…


「な、何枚か試し撮りしま~す…」




パシャ!


ビクッ!!


…っビエ~~ン!!!


ええぇ!?



「アワワワワワワ…っっ!」


子供モデルがカメラのフラッシュにびっくりして、とうとう泣き出してしまった。


え~っ!どどどうしたらいいの~っ?!



いったんカメラから手を離し、ヒラヒラの妖精に駆け寄る。



足元のセットにしわが寄らないよう気を付け、目線が同じようになるようにしゃがみ込んだ。


「えっと、ヤマト君?大丈夫?」


「うわーん!!ママ~~っ!!」


「あれ?今日ママ一緒じゃないの?」


「…うぐっ……う…ん…っ。」


「ありゃりゃぁ~そうかぁ~。」


片隅にある資料には満面の笑顔のヤマト君が載っている。


資料には親同伴と書かれている。


…おっかしいなぁ。



「今日ママなんて言ってたかなぁ?」


「…大事な…用事があるからって…ぅぐっ…おばさんについて行きなさいって…ふぇ…」


おばさん?


< 31 / 190 >

この作品をシェア

pagetop