天使の足跡〜恋幟

いつだって同じだ。

僕だって子供じゃない、そのくらい重々理解しているつもりだった。

自分の歌がありふれた平凡さだということも、ギターの腕も音楽界では通用しないということも。

時には腹立たしくて、いっそ諦めてしまえ、とも思った。

それでも「いつかは叶う」とか、「やれば出来る」とか。

そうやって未来の図を描いていなければ、できることだってできなくなる。

自分の生きる意味が、見えなくなる。

そう信じていた。


順二という人は、未来の図を見失ってしまったんだと思う。


「嫌~な再会になってしもうたなあ……順二と」


結局、僕と織理江さんは、順二さんがどんな話を持ちかけてきたのかまでは明かせなかった。

これは剣崎さんたち三人の問題で、僕が簡単に口出しして言い話じゃないと思ったからだ。

きっと織理江さんも、そうして欲しかったはずだ。

だって、剣崎さんがとても怒っていたから。













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