乱華~羽をくれた君~【完】

君がくれた大きな羽




翌日、あたしは学校が終わってすぐに陸さんと駅に向かっていた。


乗り継いで埼玉まで約一時間半。


電車の中ではほとんどしゃべらず、窓の外を眺めている彼は今何を思っているんだろう。




期待?不安?・・・どっちもかな。



あたしでさえ、陸さんのお母さんがどんな人なのか、不安と期待でいっぱいなんだから。


でもきっと優しい人に違いない。


あたしはそう信じている。




佐々木さんが教えてくれた住所にあった歯科医院は、白く新しい外観で病院にしてはオシャレな佇まいだった。


自動ドアが開くと、中から癒し系のBGMと、かすかに薬品の香りがした。



待合室では患者さんが数人座っていて、受付では凛とした顔立ちの女性スタッフが患者さんのお会計をしている。



彼女は間違いなく陸さんの母親だ。


だって目も鼻も口も笑った表情でさえ、陸さんに似ている。


隣にいた陸さんの手がかすかに震えていた。




「陸さん・・・大丈夫?」


「・・・・・・ん」


あたしの顔を見て優しく微笑み、受付へと向かった。

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