地味子の秘密*番外編*

└後編

――陸side――

3月14日―――。

午後1時。


「社長、お迎えに上がりました」

「あぁ、ありがとう」


専用の運転手が迎えに来た車に乗り、会社に向かう。

車に乗っていたのは、秘書の北原。


「社長……あの……」

「あ?」


隣に座る北原がおろおろした様子で、俺を見ていた。

なんだよ。


「あの、彼女さんは……?」

「杏か」

「はい……」


コイツは、杏に会ったことがまだない。

会社にわざわざ連れて行くこともないからな。


だから、杏の顔も素性も知らない。

神崎の令嬢だなんて、思ってもみないだろう。


「話はしてきた」

「それで……あの……大丈夫でしたか?」


チラチラと俺の顔色を伺いながら聞いてくる。

出かける予定だったのに、ドタキャンされたから杏がどうしたのかってことだろ?


フン。ちょっとイジメてやろう。


「わんわん泣かれたけど? 久しぶりの約束だったからな」

「え……」

「今、それでケンカ中」

「え……あ……」


俺の言葉に、さらにオロオロしだす北原。


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