ボーダー
それから、何時間経ったんだろう。

俺の膝では小学校から一緒だった大事な人が頬に涙の跡をつけたまま寝ている。

ふと見ると、俺の側にはしっかり折られた紙飛行機が落ちていた。

ハナちゃんの字だ。

「明日のキャンプファイヤーのスタンツは『森のくまさん』に合わせて劇をやるからね!」


ちょっと丸くなっていて可愛いこの字は、有海ちゃんの字だ。

「熊役は、大木先生だよ。
体格がメタボで熊ソックリだから即、決まったの!
一応お嬢さん役は美麗ってことになってるけどナナがやりたいって言うならそれでもいいよ。」

有海ちゃんの文章には吹き出した。
まさか。
俺、冗談半分で先生が熊役をやればいいって言ったのに。


本気でやることになるなんて。

「ん……」


やばっ……!


膝の上のナナちゃん、起こしちゃったかな?


「信ちゃん?」


「起きた?」


「ずっとこうしててくれたの?
ありがとう。」

ナナちゃんの笑顔が可愛い。
何か新婚さんみたいだよな、この会話……
いつか。
数十年後にナナちゃんと結婚したら、こんな感じに過ごすのかな。
仕事で疲れたナナちゃんを膝枕とかで寝かせてあげたいな。

ガラッ。

「もう自分のキャビンに戻れ!
って……お前ら、何イチャついてるんだ?
中坊のくせに付き合ってるの?
うわ、最近の子供はませてるな……。」


先生、いいから空気読んで下さいよ……。

俺は仕方なくキャビンに戻った。
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