おしゃべりな百合の花
「『美しい百合』って…よく言った。誉めてやりたいね。」


 龍一の皮肉った言葉に、ムッとして、


「じゃあ、何て言えばあなたは気に入ったの?」


 と反論する。


「だいたい漢字なんかどうでもいいし…。でもそうだな、例えば、美術の『び』に数の『ひゃく』、合格の『ごう』とか…。」


 龍一は自分で言ってすぐ、バカバカしくなって苦笑した。


「めんどくさい。」


「え?」


 思わず美百合を見た。


 相当不機嫌な顔をしている。


「『めんどくさい』って言ったんです。私が自分の名前をどう表現しようと私の勝手だし、第一あなたに指図されたくない。」


「そうだね。」


 再び前を向き直ると、どうでも良さそうに、龍一は素っ気無く同意した。


「あなたは?」


「え?ああ…俺も指図されるの嫌い。」


 とは言え、上司の命令で動いている下働きの身分だがと、自分の現状に龍一はまた苦笑する。


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