おしゃべりな百合の花
「何言ってんの?あなたの名前よ。」


 呆れたように美百合が言った。


 龍一はそんな態度にまたムッとしながらも、


「りゅういち」


 と答えると、美百合は堪り兼ねたように、プッとふきだし、クスクス笑い出した。


「何が可笑しい?」


 益々龍一は不機嫌になる。


「あなた…面白い…ほんと…見た目に寄らず…」


 笑いが止まらないようで、美百合は途切れ途切れにそう言った。


 『見た目に寄らず面白い』


 そんなことを言われたのは、生まれて初めてだった。


 どう言葉を返せばよいかわからず、龍一が黙り込んでいると、美百合が続けた。


「見た目は…クールで、完璧主義で、無感情なロボットみないなのに、しゃべってみると、会話のピントずれてたり、皮肉言ったり…とても人間らしい。」


 何故だか言い返す気になれず、言いたい放題の美百合を放っておいて、ひたすら龍一は運転に専念する。


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