ひめがたり~いばら姫に真紅の薔薇を~

├飼い犬の怒り

 煌Side
***************





「離れろ、下衆野郎」





やっと――



「芹霞……」



――会えた。




不覚にも俺は涙声で。


片腕の中の芹霞の温もりを感じ、更に強く力を込めてしまう。


ああ…込み上げるこの情は――

触れることが出来た温もりに対する感動と、愛しいと思う心。



俺、やっぱこいつが好きだって…思わずにはいられねえよ。



「悪い、ここに来るまでに邪魔がはいっちまって。

大丈夫か? 何もされてねえか?」



そう。


神崎家からここに向かう途中、最近よく見かけるグラサン&黒服男に何度も取り囲まれた。


手加減してやろうとか、遊んでやろうとか、そんないつもの余裕はまったくなく…どうすれば秒単位で最短で片付けられるのかばかりを考えていた。


元々、桜のように多数相手の戦いを得意としない俺は、やはり桜のように同時に瞬間終了とはいかなかったけれど。


だけど少なくともいつもよりは、ほんの僅かな時間で相手を叩きのめしたと思う。


緋狭姉の"解除"のおかげで、身体は軽く、速度も出る。


久々に素肌に感じる外気は生温くて気持ち悪かった。

汗ばんだ肌に張り付くシャツを脱ぎ捨てたくなった。


身軽な体とは裏腹に、気持ちは急いて重かった。

< 321 / 974 >

この作品をシェア

pagetop