ひめがたり~いばら姫に真紅の薔薇を~



"安易に闇を煽るべきじゃない"


玲の言いたいことはよく判る。


だけど――。


「……忘れたのか、櫂。

芹霞が闇に揺らぐ"理由"を」


「判っている。だが……」



「守りたいのは何?」



それでも釈然としない俺に、

玲がぴしゃりと言った。


無情にも思える言葉を。



「櫂。8年前に――


戻りたいのか?」



びくり。


反射的に俺の肩が震える。



――芹霞ちゃあああん!!!



「"今"を棄てる覚悟があるのなら。


闇に揺れる芹霞を……

誰よりも近くで、触れておいで?」


玲は、俺の一番痛い処を突く。



「紫堂は――


僕が継いであげるから」



だから…――


 
俺は唇を噛んで忍んだ。


煌から背を向け…憮然とソファに戻ったんだ。

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