ひめがたり~いばら姫に真紅の薔薇を~
前夜 ~喧騒の薔薇~

├お姫様の沈黙

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ふわふわと意識が浮いている。

ゆらゆらと映像が揺れている。


見えるのに理解できない。

聞こえるのに理解できない。



ただの傍観者の如く――


まるであたしの魂が、あたしの肉体に定着していないように。


それが…当然の理のように。



――芹霞ちゃあああん!!



どうして櫂の泣き声がするのだろう。


ああ、櫂を泣かせたくないのに。



――芹霞ちゃあああん!!



泣かないで。

泣かないで。



どんなに抱きしめたくても、

闇の中では可愛い姿が見えないの。



――芹霞。



ねえ櫂。


貴方は昔程、あたしを好きでいてくれている?



聞きたくて、聞けない言葉。


だって判っているものね。


櫂にとって一番は…紫堂なのだから。


きっと櫂は、言葉を濁すでしょう?


櫂は昔のように、あたしを好きだって言ってくれなくなったから。



判っている。


大好きだって言って欲しいのは、

あたしの我侭なんだってこと。



ごめんね。


ごめんね、櫂。



あたしはやっぱり、櫂を手放せないんだ。


あたし、やっぱり櫂を護りたいんだ。



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