ひめがたり~いばら姫に真紅の薔薇を~

├飼い犬と金色

 煌Side
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――手を組まね?



俺自身、どうしてあんな提案をしちまったのかよく判らねえ。


だけど、一刻も早く芹霞を何とかしねえと、事態が益々悪くなる気がして。


危惧が更に危惧を呼ぶ、そんな悪い連鎖に吐きそうだ。


芹霞。


"死んだ"だの"危ない"だの後に、"声が出ない"と言われて、それを楽観視して笑って過ごせる程、俺の心は凍りついちゃいねえ。


ましてやあれだけの熱を出して、びくびく痙攣していたんだ。

殴っても刃向かってきた、あの健康優良児が。


しかも声が出ねえって何よ?

瘴気って何よ?



ただの――

高熱からくる肉体的後遺症だとすれば、まだ救われる。


肉体的回復で元通りになるのなら、玲の結界でひたすらぐうすか寝てればいい。



だけど緋狭姉が現れた。


芹霞の"声が出ない"ことについて、あの面倒臭がりが、またわざわざ此処に足を運んだ。


今までを思うのなら。

緋狭姉が動くのは、悪い予兆を軌道修正する為で、良い予兆であれば、絶対テコでも動かねえ。


家で酒をグビグビ飲みながら、大好きな…憎悪渦巻くどろどろした昼ドラの録画を、上機嫌で見ていることだろう。



緋狭姉は、悪い何かを感じ取っている。


確実に何か知っている。




――そこまで感付いているのなら、私の介入は此処までだな。



緋狭姉はいつもそうだ。


暗喩ばかりで、真実をはぐらかす。


そうと決めたら、緋狭姉は揺るがない。

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