ひめがたり~いばら姫に真紅の薔薇を~

└お姫様とお酒

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「いい加減…離れろ、玲」


「やだなあ、櫂。芹霞が僕を離さないんだよ。見て判るだろう?」


「玲~~ッッ!! お前何処触ってるんだよッッッ!!!」


「暑そうだから、汗ばんだ肌を拭ってあげてるんだよ。タオル持ってきたくても、芹霞が僕を離さないんだから仕方が無いだろう?」


「さっきから"離さない"、"離さない"うるせえんだよ!!! 陽斗、お前真ん前に座ってこっち見ている暇あったら、芹霞を引き剥がすの手伝えよ!!!」


「出来るわけないじゃないか。こんなに僕から離れたくないってしがみついているんだもの。ね、芹霞? ふふふ、可愛いね…」


「~~ッッ!!! 玲ッッ!!! ……って、櫂ッッ!!! お前何してるんだよ!!!」


「そういうお前だって、俺の反対側で何してる?」


「あれ、桜…? 桜…あ、部屋に帰っちゃった」




何でこんなに騒がしいんだろう。



だけど…。


何だか安心出来る。

皆が居てくれるから。



そんなことを思いながら、眠りに耽(ふけ)るあたしは、少し前までのことを…薄い記憶の彼方で思い出していた。


夢へと繋がる…靄がかった記憶。


あれは確か…――――

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