ひめがたり~いばら姫に真紅の薔薇を~

├お姫様の脱出

*************


目の前の青い男が、1,300万だの、2,000万だの…そんな数を言い始めた時、あたしの頭はぐらぐらした。


常識を越えた数は、血色の薔薇の痣(ブラッディ・ローズ)?


玲くんを苦しめた、あの呪詛の塊が一斉に櫂に向かうと、この青色はそう言っているのだろうか。


逃げて。

早くそこから逃げてよ!!



それは切なる願い。



だけど――

同時に思ってしまったんだ。


あたしはこの先…

櫂達に会うことが出来るんだろうか。


こんな"声"だけで…

さよならになってしまうんだろうか。



だから――

その前に一度だけでも会いたいと…そんなことを思ってしまったんだ。



あたしは最低だ。


あたしがどうとか…そんなの無関係で早く逃げて欲しいのに…

あたしの居ない処で、過ごして貰いたくないなんて…



本当に最低だ。

< 657 / 974 >

この作品をシェア

pagetop