ひめがたり~いばら姫に真紅の薔薇を~

├王子様とアカ

 櫂Side
****************



俺の心には闇がある。


その闇が濃ければ濃い程、芹霞を護る力となる。



闇――。



芹霞にとって…

最悪な真実を隠蔽し続けていること。


無理矢理芹霞を、俺の中に閉じ込めていること。


彼女の心を抉ることが――


闇を深め、より強い彼女の守護となる。


その皮肉は…

俺にとって体裁(てい)のいい、ただの詭弁。


そして芹霞に対する罪悪感が、更なる闇を産んで行く。



俺は、決して芹霞を傷つけたいわけではない。


だけど。


芹霞のいない人生など耐えられなかった。


もし、8年前に芹霞を救う術がなかったのなら、俺は躊躇うことなく後を追っただろう。


俺にとっての"生"は、芹霞そのもので。

それを失えば、"死"あるのみ。


"生"の為には、如何なる犠牲も厭わない。



芹霞。


今頃お前はどうしているだろうか。

もう、聞いてしまったのだろうか。


何を思った?

俺をどう思った?


だが俺は――

自分のした行動に一切の悔いはない。


俺にはお前が全てだから。


お前の命が繋がるのなら、俺はどんなことでもする。


< 848 / 974 >

この作品をシェア

pagetop