ひめがたり~いばら姫に真紅の薔薇を~

├お姫様と闇

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『生きていることは

素晴らしいことだ』



昔、一升瓶片手に、酔っ払った緋狭姉が言っていた。


人間が人間であり続ける限り、誰も"生"の営みを、それが真に願うことを邪魔してはならない。しかし己の生の為に、他の生を犠牲にすることは、断じて許せぬことだ、と。


あたしは――


あたしの"生"の為に、

櫂の"生"を犠牲にしたのではないか。


あたしは…気づかなかったとはいえ、生者ぶって"運命"だの"永遠"だの櫂に訴えてきたけれど、それは所詮滑稽過ぎる夢幻だった。


あたしという存在自体が、

既に儚く既に消え去っていたのだから。


そんなあたしから――…

櫂が離れて当然だ。



「……櫂……」



あたしの頬を伝う涙は、熱かった。


熱を含んだそれは…

……屍の流す涙。



――あたしは櫂がだあい好き。


櫂と共にありたかった。

いつでも、どんな時でも。


――あたし達は、永遠だよ?



「櫂――ッッ!!!」


吠えるように泣き叫ぶあたしの耳に、笑い声が反響する。


「あはははは!!!

こんな時に呼ぶのは気高き獅子か!

さあ…どうする、レイクン?」


ふわり、と体を包み込む温かさ。


温かい…。


あたしが欲する…

生きている人間の温かさ。


でも――

櫂じゃない。


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